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【DbD】キラー・トラッパー背景・考察

ゲームの代表キラーでもあるトラッパー。

その姿は映画の殺人鬼をモデルとしつつもDbDオリジナルのキラーとして、ゲーム開始初期から使用でき、彼の特殊技能であるトラバサミの罠から「トラちゃん」などの愛称で親しまれています。

彼がどうして黒い霧の殺人鬼になったのか、彼の背景と一緒に紹介していきます。

 

トラッパー基本情報

本名:エヴァン・マクミラン

ホームマップ:マクミランエステー

特殊技能:

 

背景

エヴァン・マクミランは父親を崇拝していた。

それは彼が莫大な財産の相続人だったというだけでなく、そうすることで父親の地所を管理していた。父親の庇護の元、エヴァンは厳格に労働者を管理することに没頭していった。生産高はいつも好調で、マクミランエステートは父子経営のもと成長していった。

やがてアーチー・マクミランの精神状態はゆるやかに乱れていったが、エヴァンは財産のおこぼれを狙う者たちから父を守った。エヴァンは父親の言うことならどんなことでも行ったのだ。

父親を崇拝するあまり、父親の言いつけを盲目的に実行することに何の疑問も持たなかった様です。少しずつ狂っていく父親

ついにアーチーは完全に錯乱し、エヴァンは父親の意思のもと、近代史における最悪の殺人鬼と化すこととなった。エヴァンが100人を超える労働者を暗いトンネルに入らせ、入り口を爆破して永遠に閉ざしたことを証明する手段は存在しない。

マクミランエステートの物語は、富と権力が非常に間違った方向に使われた例として語られるようになった。父子により犠牲となった人たちの数は不明。その後のエヴァン・マクミランについて記録は全く残っていない。

そしてもう1つの謎は、彼の父親が倉庫の地下室でーー遺棄死体として発見されたことだ。

 

 

 学術書ストーリー「血、真鍮、気骨」

記憶 1235

14歳のエヴァンは、父親が知らないことを知っている。そう考えて悦びに震える一方で、恐ろしくもあった。

父親が知らないことが存在する。

シアトルで最も利益を生んでいる鉱山のひとつ、それを所有する父が知らないことを自分は知っているのだ。父親は労働者を鉄拳制裁で無慈悲に搾取している。いや、鉄拳ではない、メリケンサックだ。父親は労働者をウジ虫と呼んでいる。卑屈なウジ虫ども。父親は、自分が間違っていることに気付き始めている。労働者はウジ虫よりはずっと高等な存在だ。労働者は人間だ。そして人々が協働すれば、そこには変化が生まれることもある。

労働者の1人が仲間を焚き付けて、自分たちの生活を取り戻そうとしている。もしも奴らが共に立ち上がったとそたら、労働組合を結成するかもしれない。労働組合があれば、奴らは権利を得る。奴らが得るのは権利だけに留まらない。尊厳。自由。時間。友人と過ごす時間。人間でいるための時間。エヴァンは父親が知らないことを知っている…そして、自分に力がみなぎっているのを感じている。

 

記憶 1236

父親はエヴァンを地面に押し付け、臆病者と呼ぶ。ウジ虫どもに優しく接するのはやめろ。父親はいう。ウジ虫どもとは口をきくな。力を貸すな。奴らを見張り屈服させろ。誰が雇い主なのか叩き込め。わずかでも妥協すれば、奴らはすぐにつけあがる。ウジ虫どもはただお前を利用しているだけだ!エヴァンは口ごたえしても無駄だと分かっている。昨年、弱みを見せた父親のパンチでアゴを打ち抜かれた。今年はストローで食事を取るのはごめんだ。今年は自分を抑え、口を閉ざすことにする。

父親に労働組合のことを教えたいと考えているが、エヴァンは何も伝えない。良心の呵責を感じているのだ。父親の忠誠心と友人たちへの感情。それぞれとの関係の間でエヴァンは揺れ動く。

ボブ、トム、そしてジム。素晴らしい友人たち。

 

記憶 1237

エヴァンの趣味はゼロからのものづくりだ。

芸術家肌ではないが、スケッチを描くことを楽しんでおり、描いたスケッチは父親の目に触れないように隠している。父親からはスケッチ禁止令が出ている。スケッチは放浪者やジプシーなどの軟弱者がすることだ。父親はエヴァンにはもっと価値があることをしてほしいと考えており、エヴァンを利益を生み出す鉱山へと連れて行く。

父親はエヴァンにウジ虫のしつけ方を教える。父親は人任せにしない現場主義であり、熾烈な人間だ。獣のような暴力性を秘めている。重要なのは…ウジ虫どもを屈服させることだ。奴らの意思を叩き折る。魂を叩き潰す。一度叩きのめせば、人間はどんなことにも使える道具と成り果てる。根底から叩きのめせ。それはエヴァン自身や、母親を支配した時と全く同じやり方だった。

それでもエヴァンはスケッチを描き続ける。スケッチを描くことで抗っているのだ。

 

記憶 1238

 エヴァンは父親が労働者の1人を怒鳴りつけるのを見つめている。その労働者は病気に苦しんでおり、退職を望んでいる。だが、それは認められない。退職するということは…仕事を失うことだ。

エヴァンはその男に同情する。何かしてやりたかった。状況はきっと変わると、伝えようと考えている。労働組合がまもなく結成され、賃金は改善し、労働時間も真っ当なものになる。だが、男の肺は真っ黒に汚れ、胃は衰弱している。過度のストレスと酸でやられたのた。睡眠時間も不足している。

男が倒れ込む。父親は気にも留めずに男の腹に蹴りを入れると、鉱山から運び出すようにエヴァンに指示する。エヴァンは男を引っ張り出す。一瞬、エヴァンはその男の弱さに嫌悪感を抱き、このウジ虫の悲劇を終わらせてやりたいという考えが頭に浮かぶ。

エヴァンは父親のような人間になりつつある。それが果たして悪い徴候なのか、自分では確信が持てないでいる。

 

記憶 1239

エヴァンは父親から、暗い森の中で熊の罠を仕掛けるように命じられている。父親は熊を狩ることに憑りつかれている。これまでもずっとそうだった。父親が話を始める。いつもの物語を。いつも同じ話だから、エヴァンはもうウンザリしている。またか、と思いながらも聞いてやる。父親が弟である叔父と一緒に狩りをしていると、グリズリーが現れた。巨大なグリズリーだ。グリズリーはエヴァンの叔父にあたる、弟の腕を引きちぎり、頭にかみついた。父はグリズリーの背中に飛びつく。後ろから何度も熊を刺して、殺した。胃袋を切り開いて、弟の頭を取り出した。バラバラになった弟の亡骸を、10マイルもかけて持ち帰ったという。今回は10マイルだ。前は5マイルだったのに。父はこの話を、ニヤリと笑う。話は毎回変わっていく。エヴァンはそもそもそんな熊が居なかったのではと、思うこともある。

 

記憶 1240

今までになかった表現がエヴァンの頭にひらめく。熊の皮をかぶった父親が、叔父を殺しているスケッチを熱心に描いている。叔父には一度も会ったことはないが、写真で見たことはあった。叔父は慈善家で、感傷的になり過ぎる傾向があった。叔父が会社を経営していたら、まともな賃金と社会主義的な愚かな考えでビジネス破産させていたかもしれない。だから叔父は死ななくてはならなかった。証拠はないが、エヴァンは知っている。心の中では、父が叔父を殺したと分かっている。叔父を縛り付け、熊の餌となるように放置した。ナイフもない。戦いもない。名誉もない。そこにあったのは、不誠実な虫に相応しい、残虐な死だけだ。

エヴァンは父親が叔父を殺したのだと考えていたが、それでも嫌悪感や戸惑いの感情を抱くことはない。エヴァンにはそれとは違う、なにか別の感情が湧いている。自分にそのような部分があるとは認めたくない、異様な感情だった。

 

記憶 1241

エヴァンは父親のベッドにゆっくり近づき、眠っている父親を見つめている。父親に対しては、憎悪と愛情を同時に抱いている。この父親がいなかったら、どういう人生になっていただろうか。ふと、そうした考えが頭をよぎる。父親からは多くの恩を受けたが、それでも自分は不幸で、孤独である。エヴァンは灰色の大きな石を持ち上げると、その姿勢のままじっと動きを止める。それは永遠とも思われるほど長く感じられる。自由になれるかもしれない。心の自由が手に入るかもしれない。だがエヴァンは思いとどまるしかない。そうじゃない。自由になるには別の方法がある。人生には不慮の事故がつきものだ。狩猟中の事故。鉱山での事故。鉱山の奥深くに父親を誘い込み、ダイナマイトに点火することもできる。生き延びることはまず不可能だ。だが、エヴァンには実行に移すことはできない。父親を愛する気持ちは、憎しみよりも大きかった。エヴァンは父親からあまりにも多くの恩を受けているのだ。

 

記憶 1242

エヴァンは熊の皮をかぶった父親が母親を溺死させているスケッチを描いている。父親の話を信じたことなど一度もなかった。何かがおかしいと感じていた。父の目。ニヤリと笑った顔。他社への共感の欠如。母は流れに引き込まれると、二度と姿を表さなかった。母は…美しかった。ブロンドの髪に、ブルーの瞳。明朗で、他者への慈悲に満ちていた。父親とは正反対だ。ある朝、母は泳ぎに出かけていき、二度と戻らなかった。母は父親の足手まといになっていた。そして、父親は誰であれ自分の邪魔はさせなかった。家族でさえも、邪魔者は許さなかった。家族以外の者なら、尚更だった。

服従か死か。服従には嫌気がさしている。確かに父親に対する忠誠心は存在したが、同時にエヴァンは友人に対しても忠実な人間である。友人たちはエヴァンと話し、励ました。友人たちの目には、エヴァンは優れた芸術家に見えている。エヴァンには友人がしる。今まで、本当の友人はいなかった。父親が許さなかった。時間の無駄だ。お前の友達は、お前のことを利用しているに過ぎない。エヴァンは父親に忠実である一方、それは友人に対しても同じである。称賛すべき、素晴らしい友人たち。

 

記憶 1243

父親がディナーテーブルの向こうからエヴァンを見つめている。おそらくはエヴァンも無意識のうちに嫌な気分を感じている。父親の目には不穏な雰囲気がある。痛い目にあわせてやる、という目つきだ。エヴァンは脂肪分の多いうさぎの肉を食べながら、父が何も言わないことを祈る。父に隠し事をしても無駄だと覚えておくべきだった。父は知っている。すべてを知っている。昨年、エヴァンは自制心を失い、母親を悪く言った男をツーバイフォーの角材で危うく殴り殺すところだった。父は笑いながら見物していた。エヴァンは当局に連行された。父親は満足げにエヴァンを見ていた。認めたくはないが、自分にも父親の血が流れているのだ。父はそのことを知っていた。エヴァンは暴行を楽しんでいた。母親を侮辱されたからではない。恐怖を感じたからでもない。自分の持つ力を…感じたからだ。鬼の子は、どうあがいても鬼にしかなれない。父は笑いながらそう言った。

 

記憶 1244

エヴァンはズタズタに引き裂かれたスケッチを見つける。一枚のスケッチ以外は全て見つかった。溺れている母親の絵がない。父親が部屋に入ってくる。エヴァンの前に絶望と恐怖が広がる。エヴァンは強烈な一撃が来るのをジッと待ったが、父の鉄拳は飛んでこない。その代わりに父親の口から出たのは、自分には直感があるという言葉だ。直感が全てだと。父親は、自分は父方の家系からそれを受け継いでいるという。それと同じ直感によって、エヴァンが父親から何かを隠していることに気付いたのだった。嘘をつくのをやめろ。私には分かる。ウジ虫のようなお前の友達がたった数ドルのためにお前を売ったのだ。エヴァンは驚いたが、何も言わない。言葉が出ないのだ。喉まで出かかった言葉を飲み込みエヴァンは謝る。何も言わずに歩き去っていく父親を追いかけて、寝室までついていくエヴァン。そこで見たものは、ベッドの上に額に入って飾られている瀕死の母親の絵だった。父は言う。明日はお前にしつけをしてやろう。エヴァンは父親を見つめる…そして、自分を裏切ったウジ虫への憎悪をたぎらせる。父親に対して感じたのは…尊敬だった。違う。尊敬ではなく…もはやそれは崇拝の感情になっていた。