気になるものの覚え書き

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【DBD】学術書Ⅱ・報い「マンチェスター・ミックス」

記憶:デイビット・キング

 
 

記憶339

キングは傷を負った拳をぎゅっと握る。酔っ払いどもの歓声や怒鳴り声が路地にこだまする。キングは倒れた相手を見つめる。血を流す顔。潰れた鼻。欠けた歯。キングは最後の仕上げとして顔を蹴りつける。キングはファイトで負けたことがない。今も、そして、これからも。キングに賭ければ大丈夫。キングは群衆を見渡す。ドニーを見つける。賭け事で問題のある古い友人だ。俺に賭け続ければ問題じゃなくなる。キングは腕時計を見る。家族会議には遅刻だ。
 

記憶340

キングの父は、自分が理解できないことで口答えされると、母を虐待する。いつも同じクソだ。キングは歯を食いしばる。血と熱が顔に上る。喧嘩でキングが負けることがないのは、対戦相手に父親の顔が投影されるからだ。襲いかかりたい。何か言いたい。なんでもいい。だが、何か言うといつもさえぎられる。だが、今回はキングが正気じゃない。もしくは正気なのかもしれない。父親が母親を殴ろうと手を挙げる。理解するよりも早く動く。一瞬でキングは父親の腕を掴む。次の瞬間キングは父親を昔年の恨みを込めて痣ができるまで殴る。キングは母が父を抱き起こしている間に立ち去る。出ていけ!もう二度と顔を見せるな!この親不孝者が!出ていけ!
 

記憶341

キングには友達がいたことがなかった。本物の友達という意味だが。腰巾着履いた。虎の威を借る狐のようなバカ共だ。今は誰もいない。助けてくれるような友達は一人だっていない。かつて学校にいた頃は友達がいた。だが昔の話だ。キングには金が要る。だが金は木になるわけではないし、キングに挑む者もいない。最後の相手をひどく痛めつけてしまったからだ。キングには仕事が要る。口座の金は尽きかけているし、昔からの浪費癖は治すのが大変だ。
 

記憶342

キングはトミーに会う。トミーのアパートにはキングが住める場所がない。住ませてあげたいが、無理だと言う。ミックが助けようとするが、ミックの母親が許さない。ビルとハリーも同じだ。元カノは新しい彼氏ができて、キングの顔を見るのも嫌らしい。くそったれにはよくある話だ。永遠にホテルの部屋で暮らすなんてできない。貯金がなくなる。キングは最近見かけた、最後の喧嘩での群衆の中の顔を思い出す。その男とは幼い頃から友達だった。進む道は間違えたが彼は本当の友達だった。キングは彼の住所を探す。キャッスルドライブ通り。キングはタクシーを捕まえる。
 

記憶343

キングは長いこと生きている実感がなかった。心の通った本当の友をどれだけ欲していたかを実感しながら、キングはドニーのアパートで古いエールを飲む。ドニーは、キングが金持ちの生まれと知る前から友達だった。金持ちは本当に豊かってわけじゃないのさ。キングはどうしてドニーがこう考えるのか、何を意味するのか理解できない。ただの思いつき。昔みたいな一杯やりながらの話。ドニーはキングが身の振り方を決めるまでいていいと言う…。キングはそれがいつになるかわからない。問題ないさ。急にドアが叩かれてキングは驚く。ドニーが立ち上がる。ドアを開けると、黒のレザージャケットを着た数人の男が現れる。筋肉。キングはよく聞き取れない。キングが聞き取れたのは気に入らないことばかりだ。ドニーは金を借りていて、返さなければ顔面に鉛弾がたっぷりと叩き込まれるのだと言う。ドニーはキッチンテーブルに戻ると笑う。お前のせいだ、キング。誰に賭けていいのかもうわからないんだよ。
 

記憶344

キングは仕事を3回クビになり、一番うまくできる仕事に戻ることにする。挑戦者が薄暗い裏小路で戦いの場に踏み込む。キングの二倍の大きさ。デカい。キングは怖気づかない。他のやつと同じように沈むだろう。群衆は相手をゲットー・マッシャーと呼ぶ。ゲットー・マッシャーはキングを睨みつける。キングが飽きるほど聞いたルールをレフェリーがまくし立てる。キングは相手を睨む…そして目にする…父親ではんく対戦相手を。ゴングが鳴る。獣のような唸り声と共に、ゲットー・マッシャーが飛び出す。キングは頭を吹き飛ばすような激しい一撃をかわす。妙な感覚。反応しない。混乱している。ドニーがキングに叫ぶ。キングがドニーをちらり見ると同時に頭に巨大な拳が当たる。黒色が目の周りに渦巻く。頭への衝撃は覚えていない。足が崩れたのを覚えていない。腐ったゴミの山に倒れ込んだのも覚えていない。ただドニーのアパートのソファで目を覚ましたのだけは覚えている。強みを失った。憤怒を。激怒を。憎悪を。それだけだったのか?ドニーは大丈夫か、と聞いてきたが、キングにはわからない。俺は大丈夫なのか?強くなれるのか?わからない。ただのまぐれ当たり?相手に運があったのか?最後の奴にはある。俺はだめな気がする。俺はだめだ。ドニーは最後の金をキングに賭けたのだ。
 

記憶345

キングはバーの仕事に慣れてきている。アルコールで気分を落ち着けながら。ドニーはビールをすすると、キングは戦う他の理由を見つける必要があると言う。キングはドニーに、今飲んでいるビールが小便になって出る前に家に帰れと言う。トラブルに巻き込まれる前に。遅かった。キングは二人の男を見つける。彼らはドニーに近づく。ドニーを掴む。ドニーを地下に押し込む。まずい状況だ。キングはドニーを助けようとするが、マネージャーがバーの仕事を続けるように怒鳴る。知るか。キングはバーを飛び越えると地下室に急ぐ。ドニーがゲットー・マッシャーに殴られ、アンクル・プラスが椅子に座ってそれを見ている。キングは躊躇しない。ゲットー・マッシャーにタックルする。強烈な拳が交わされる。ゲットー・マッシャーはついてこれない。アンクル・プラスはキングにも相手を仕向ける。問題ない。キングは破壊の突風だ。キングはゲットーの膝を砕き、眼孔に親指を叩き込む。神経で繋がったままの目玉が飛び出す。恐怖の叫び声。ゲットー・マッシャーは眼球を覆って医者を呼んでくれと叫びながら、よろめき壁にぶつかる。もう何人かのごろつきが襲い掛かってくる。そこまでだ!アンクル・プラスが立ち上がってキングに近づく。貴様のクソ頭を引きちぎるのなんて朝飯前だ。ワシの子分にしてくれたことの仕返しだ。キングはふらつきながらも立ち上がる。俺だってまだまだイケるだろ?ワシのために働くなら、こいつの借金は帳消しにしてやろう。キングは姿勢をただし、上着をはたく。笑みがこぼれる。キングに賭ければ大丈夫。