気になるものの覚え書き

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【DBD】学術書Ⅰ・覚醒「渇望」

ストーリー:記憶「錬金術師」

記憶1746

男は死と虚無の腐敗の間でうつろう。自分の名前も思い出せない。全てが霧で霞んでいるかのようだ。胃に痛みが走る。腕に。そして静脈の中にも。男はあの一輪の花を探し求める…あの花蜜…力を与えてくれる…あの甘美な蜜を求めている。その力は何のためにあるのか?男は記憶をたぐる…あの殺人鬼が…奴らに実験を行っている。その目的は?何を目的とした実験だったのか?何も思い出せない。男は多くの苦しみを引き起こした。だが後悔は感じない。後悔という感情を抱くべきなのか、それすらも分からない。男には何の感情もない。胃に開いた穴の痛みが、力を与えてくれるのを感じるだけだ。
 

記憶1747

医者の姿をした殺人鬼の幻影が頭をよぎる。その叫び声。苦しみ。奴と立場を逆転させる。奴がこれまで多くの人間にしてきたように、奴に実験を行なう。どこで?ここではない、どこか別の場所で。別世界で。別世界から置き去りにされたこの生存者全員…奴は何故知っているのだろうか?男は思い出せない…男は実験のことを思い出す。男は何を理解しようとしていたのか?花蜜?漿液?適正な服用量のことだろうか?適正な服用量なら…自分に害を与えることもない。もう遅すぎる。
 

記憶1748

男は飢えを感じている。食料や飲み物を求めているのではない。会話や楽しみを求めているのでもない。一輪の花。そして漿液。エンティティが自分を監視していることに気付いている。男には分かる。骨の髄からそれを感じているのだ。再び試練を受けさせられたくはない。苦しむのも、苦しみを引き起こすこともしたくはない。それに試練の目的とは?それが最も恐ろしい謎だ。男はこの場所が一体何なのか理解しようとする。だが、男は感じている。真実を理解した時、おそらく正気を失うだろう。狂気。この場所にあるのは狂気だ。狂気そのものを具現化したのがこの場所だ。もう一度試練を受けたくはない。家に戻りたい。家に戻らなくてはならない。男が漿液を研究していたのはそれが理由だった。漿液を使うと洞察力が高まった。何に対する洞察力なのか?男には思い出せない。
 

記憶1749

家…家がどこにあるのかさえ、思い出せない。唯一、虚無だけが男の記憶に存在している。数百、おそらくは数千のうち捨てられた生存者たち。死んではいない。だが、生きてもいない。死者でも生者でもない。生きながらにして、その内側は死んでいる。真っ黒に焦げ付いている。感情も持たず、エンティティにとっての価値もない。男は覚えている…虚無から這い出て、一輪の花を見つけたことを…この花が男にとっての救済だったのだろうか?その花が逃げ道だったのだろうか?男はひざまづいて、深淵に向かって叫ぶ。深淵は沈黙をもってそれに答える。耳が痛くなるほどの静けさが広がり、男を打ちのめす。男はゆっくりと立ち上がる。漿液が必要だ…
 

記憶1750

男は道を見失っている。自分がどこにいるかさえ分からない。霧から触手のようなものが伸びてくるのが見える。分かってる。これは現実じゃない。決して現実のはずがない。男はわずかに残っていた正気を失いかけている。巨大な、形容しがたい怪物が迫ってくるのがその目に映る。男は意に介さない。こんなものは現実にあり得ない。あり得るはずがない。渇望が男を混乱させ、抑えつける。再びこの渇望を満たすためなら、男はどんなことでもするだろう。どんなことでさえも。試練に戻ることさえするだろう…生存者と殺人鬼を八つ裂きにして、渇望を満たす。男は何かをつぶやき始める。ある約束…一輪の花…一輪の花のためなら…私はどんなことでもする…